【ITパスポート練習問題 6.3対応】(1) 労働関連法規

【解説】

正解: 2 法定労働時間を超える労働を可能にするため

この問題は、日本の労働基準法における「36協定（サブロクきょうてい）」の最も基本的な役割、特に時間外労働との関係を理解しているかを確認するものです。

労働基準法では、1日8時間・週40時間という「法定労働時間」の上限が定められています。正解の選択肢は、この法定労働時間を超えて従業員に残業（時間外労働）や休日労働をさせる場合に、会社（使用者）と労働者の間で必ず結ばなければならない協定が36協定であることを正しく説明しています。この協定があることによって、法律違反にならずに時間外労働をさせることが「可能になる」のです。

選択肢1の「休日を増やすため」は誤りです。36協定は労働時間を延長するための手続きであり、休日を増やすこととは目的が異なります。選択肢3の「労働契約を解除するため」も誤りです。これは解雇などに関するルールであり、労働時間に関する36協定とは全く関係ありません。

【解説】

正解: 1 労働基準監督署への届け出

この問題は、36協定を締結した後、それを法的に有効にするために必要な「手続き」を理解しているかを確認するものです。

36協定は、会社と労働者の代表（労働組合など）が内容に合意して「締結」するだけでは、法的な効力を持ちません。正解の選択肢の通り、締結した協定書を管轄の「労働基準監督署」に「届け出」て受理されることによって、初めてその協定に基づく時間外労働が可能になります。

選択肢2の「企業内部での承認会議のみ」は誤りです。内部での合意はもちろん必要ですが、それだけでは法的な手続きとしては不十分です。選択肢3の「労働者個人との契約更新」も誤りです。36協定は会社と「労働者の代表」が結ぶものであり、個々の労働者と契約を更新するものではありません。

【解説】

正解: 3 法定労働時間を超える可能性がある職場

この問題は、どのような職場や状況において36協定の締結が「必要」となるのか、その適用条件を理解しているかを確認するものです。

36協定は、法定労働時間（1日8時間・週40時間）を超える労働（残業）や休日労働を「少しでもさせる可能性がある」場合に必要となります。たとえ1年に1回でも、その可能性があるならば、あらかじめ協定を締結し届け出ておく必要があります。

選択肢1の「すべての職場」は誤りです。もし会社が「法定労働時間内での勤務しか絶対にさせない」と決め、それを実行できるならば、36協定を結ぶ必要はありません。選択肢2の「法定労働時間内での勤務のみ」は、36協定が「不要」な場合の説明です。

【解説】

正解: 2 所定の労働時間を一定期間内で調整できる

この問題は、柔軟な働き方の一つである「フレックスタイム制」の基本的な仕組みと、その「制約」を正しく理解しているかを確認するものです。

フレックスタイム制とは、あらかじめ定められた「清算期間」（例えば1ヶ月間）の中で、働くべき「総労働時間」（例えば月160時間）を満たせば、日々の出退勤時刻を労働者がある程度自由に決められる制度です。したがって、「一定期間内（清算期間）で所定の労働時間（総労働時間）を調整できる」という説明が最も適切です。

選択肢1の「出勤時間を完全に自由に選べる」は誤りです。多くのフレックスタイム制では、必ず出勤しなければならない「コアタイム」が設定されており、完全に自由ではありません。選択肢3の「休日を労働者が自由に設定できる」も誤りです。休日は会社のカレンダーや就業規則で定められており、フレックスタイム制が管理するのは労働日の出退勤時刻です。

【解説】

正解: 1 必ず出勤が必要な時間帯

この問題は、フレックスタイム制を運用する上で重要な構成要素である「コアタイム」という用語の意味を正しく理解しているかを確認するものです。

コアタイムとは、フレックスタイム制を導入している職場において、「この時間帯は必ず勤務していなければならない」と定められた時間帯（例えば午前10時から午後3時まで）を指します。会議や共同作業を円滑に行うために設定されます。

選択肢2の「労働時間を短縮する制度」は、時短勤務などの説明であり、コアタイムとは関係ありません。選択肢3の「休日の割り当て時間」も誤りです。コアタイムは労働日における勤務時間帯のことです。

【解説】

正解: 2 労働者代表との協定締結

この問題は、フレックスタイム制という特別な労働時間制度を会社に導入する際に、法律上必要となる手続きを理解しているかを確認するものです。

フレックスタイム制を導入するには、まず「就業規則」にその旨を規定した上で、会社と「労働者の代表（労働組合など）」との間で、制度の詳細（対象者、清算期間、総労働時間、コアタイムなど）を取り決めた「労使協定」を締結することが必須です。

選択肢1の「労働基準監督署への届け出」は、清算期間が1ヶ月を超える場合にのみ必要となりますが、1ヶ月以内であれば不要です。しかし、労使協定の締結（選択肢2）は清算期間に関わらず必ず必要です。選択肢3の「業務の内容が自由な仕事」であるかどうかは、制度がうまく機能するかの判断材料にはなりますが、法的な導入条件ではありません。

【解説】

正解: 2 研究開発職

この問題は、「裁量労働制」という特殊な働き方が、どのような業務に「適用可能」なのか、その対象を理解しているかを確認するものです。

裁量労働制は、業務の進め方や時間配分を労働者の裁量に委ねるのが適していると法律で定められた特定の業務にのみ適用できます。「研究開発職」は、時間管理よりも成果（研究結果）が重視されるため、この制度の対象業務として法律で明確に定められています。

選択肢1の「一般事務職」や選択肢3の「製造ラインの作業」は、労働時間の長さと成果が比例しやすい業務であり、労働者の裁量に任せるのが難しいため、裁量労働制の対象業務として認められていません。

【解説】

正解: 3 実際の労働時間にかかわらず労働したと見なす時間

この問題は、裁量労働制の根幹となる仕組みである「みなし労働時間」という用語の定義を正しく理解しているかを確認するものです。

「みなし労働時間」とは、その日に実際に働いた時間（実労働時間）とは関係なく、「あらかじめ労使協定で定めた時間だけ働いたと『見なす』」時間のことを指します。例えば「みなし労働時間8時間」と決めた場合、実際には6時間しか働かなくても、あるいは10時間働いたとしても、その日は8時間働いたものとして扱われます。

選択肢1の「実際の勤務時間」は、みなし労働制が適用されない場合の時間の数え方です。選択肢2の「企業が自由に決める労働時間」は誤りです。「みなし労働時間」は企業が一方的に決めるのではなく、必ず労使協定で定めなければなりません。

【解説】

正解: 3 労使協定の締結

この問題は、裁量労働制という非常に特殊な制度を導入する際に、法的に必須となる手続きを理解しているかを確認するものです。

裁量労働制を導入するには、まず会社と労働者の代表（労働組合など）との間で「労使協定」を締結し、対象業務や「みなし労働時間」などの詳細を定めることが大前提となります。

選択肢1の「労働基準監督署への事前届出」も、裁量労働制（専門業務型）の導入には必要ですが、まず協定（選択肢3）がなければ届け出る内容がありません。したがって、協定の締結がより根本的な要件となります。選択肢2の「個別の労働者契約のみ」では導入できず、労働者代表との包括的な協定が必要です。

【解説】

正解: 2 労働者の生活を最低限保障するため

この問題は、国が「最低賃金」という制度を法律（最低賃金法）で定めている、その社会的な目的や背景を理解しているかを確認するものです。

最低賃金制度は、賃金の最低額（下限）を法的に保証するものです。その主な目的は、立場の弱い労働者も含め、働く人すべてが最低限の安定した生活を送れるようにすること、つまり労働者の生活保障（セーフティネット）です。

選択肢1の「労働市場の競争を促進するため」は誤りです。この制度は、賃金の過度な引き下げ競争に歯止めをかけるものです。選択肢3の「企業の利益を最大化するため」も誤りです。これは労働者保護の制度であり、むしろ企業の利益（人件費）とは対立する側面があります。

【解説】

正解: 2 パートタイム労働者を含むすべての労働者

この問題は、最低賃金法が、どのような雇用形態や立場の人に適用されるのか、その「対象範囲」を正しく理解しているかを確認するものです。

最低賃金は、原則として国内で働く「すべての労働者」に適用されます。これには、正社員だけでなく、パートタイム労働者、アルバイト、契約社員、派遣社員、さらには国籍を問わず外国籍の労働者も含まれます。

選択肢1の「正社員のみ」は誤りです。むしろ、パートタイムやアルバイト労働者の保護に大きな意味があります。選択肢3の「外国籍労働者を除く」も誤りです。外国籍労働者にも日本人と同様に適用されます。

【解説】

正解: 2 毎年

この問題は、最低賃金の金額がどのように更新されていくのか、その「改定の頻度」に関する実務的な知識を問うものです。

最低賃金額は、経済実態や物価の変動などを反映させるため、中央最低賃金審議会からの答申（目安）に基づき、原則として「毎年」見直し（改定）が行われます。通常、夏頃に議論され、10月頃に新しい金額が発効されます。

選択肢1の「毎月」は誤りです。頻繁すぎて実務が追いつきません。選択肢3の「必要なときにのみ」も不正確です。不定期ではなく、毎年定期的に見直すプロセスが確立されています。

【解説】

正解: 1 派遣元企業

この問題は、「労働者派遣」という働き方の最も重要な特徴である「雇用関係」と「指揮命令関係」の分離を理解しているか、特に「雇用主は誰か」を問うものです。

労働者派遣では、労働者は「派遣元企業」（派遣会社）と雇用契約を結びます。給与の支払いや社会保険の手続きは派遣元が行います。したがって、法律上の「雇用主」は派遣元企業です。その上で、実際の仕事は「派遣先企業」（クライアント）で行い、仕事の指示（指揮命令）は派遣先企業から受けます。

選択肢2の「派遣先企業」は、仕事の指示（指揮命令）を出す人であり、雇用主ではありません。この「雇用主」と「指揮命令者」が異なる点が派遣契約の特徴です。選択肢3はありえません。

【解説】

正解: 1 労働者の雇用を保護するため

この問題は、労働者派遣法で「派遣期間の上限」（いわゆる3年ルールなど）が定められている、その法律の「目的」や「背景」を理解しているかを確認するものです。

派遣労働という形態は、直接雇用に比べて雇用が不安定になりがちです。そのため、同じ職場で長期間にわたり派遣労働者として働き続ける（固定化される）ことを防ぎ、派遣労働者の「雇用の安定」と「キャリアアップ」を図る目的で期間の上限が設けられています。上限を迎えた際に、派遣先企業が直接雇用に切り替えることを促す狙いもあります。

選択肢2の「企業のコストを削減するため」は誤りです。むしろ、企業が派遣労働者を使い続けたい場合に制限をかけるものなので、企業の利便性とは逆の規制です。選択肢3の「労働者の転職支援」も、期間制限の直接的な理由ではありません。

【解説】

正解: 3 労働者に適切な雇用契約と待遇を提供すること

この問題は、労働者派遣の仕組みにおいて、「派遣元企業」（派遣会社）が「雇用主」として法的に負うべき「義務」や「役割」を正しく理解しているかを確認するものです。

派遣元企業は派遣労働者の「雇用主」です。したがって、労働者と適切な「雇用契約」を結び、その契約に基づいて賃金を支払い、社会保険を適用し、福利厚生を提供するなど、労働者の「待遇」全般に責任を持つ義務があります。

選択肢1の「派遣先企業の指示をすべて守ること」は誤りです。これは派遣元と派遣先との間の「派遣契約」に関する話であり、派遣元の「労働者に対する義務」ではありません。選択肢2の「派遣先企業の業務を直接管理すること」も誤りです。日常業務の指示や管理（指揮命令）を行うのは「派遣先企業」の役割です。

【解説】

正解: 2 重要な情報を保護するため

この問題は、企業間取引や業務委託の際に用いられる「守秘義務契約（NDA）」の、最も基本的な「目的」を理解しているかを確認するものです。

守秘義務契約とは、取引や交渉の過程で相手方に開示する「重要な情報」（営業秘密、顧客情報、新技術など）を、相手方が許可なく第三者に漏らしたり、別の目的に使用したりすることを法的に禁止する契約です。つまり、自社の「重要な情報を保護するため」に締結します。

選択肢1の「他社との競争を促進するため」は誤りです。むしろ、情報が漏れることによる競争上の不利益を防ぐためのものです。選択肢3の「取引先の利益を最大化するため」も誤りです。これは情報を「開示する側」の利益を守るための契約です。

【解説】

正解: 3 共同開発の開始時

この問題は、どのようなビジネスシーン（場面）で、守秘義務契約の締結が「必要」となるかを、具体的にイメージできるかを確認するものです。

守秘義務契約は、自社の「機密情報」を相手に「開示する必要がある」場合に締結します。「共同開発の開始時」は、お互いの技術情報や開発計画といった非常に重要な機密情報を交換する必要があるため、守秘義務契約の締結が必須となる典型的な場面です。

選択肢1の「製品の販売契約時」は、一般的な製品（公になっている製品）を売買するだけなら機密情報の交換は発生しないため、通常は不要です。選択肢2の「労働契約の終了時」（退職時）にも、秘密保持を再確認する誓約書などに署名することはありますが、入社時に包括的な守秘義務に同意しているのが一般的であり、契約を「締結」する主な場面ではありません。

【解説】

正解: 2 法的な制裁や損害賠償請求

この問題は、守秘義務契約が「法的な契約書」であることを理解した上で、それに「違反」した場合にどのような「ペナルティ」が発生するかを問うものです。

守秘義務契約は法的な拘束力を持つ「契約」です。もし契約に違反して情報を漏洩させた場合、契約違反（債務不履行）と見なされます。その結果、情報を漏洩された側は、漏洩した側に対して、それによって生じた「損害の賠償を請求」したり、情報の使用差し止めを求める「法的な制裁」を求めたりすることができます。

選択肢1の「取引契約の変更」は、結果として行われるかもしれませんが、違反に対する直接的な制裁ではありません。選択肢3の「契約内容の一部公開」は全く逆で、違反とは関係ありません。

【解説】

正解: 1 請負契約では業務の完成が求められる

この問題は、似ているようで法的に全く異なる「派遣契約」と「請負契約」の、決定的な「違い」を理解しているかを確認するものです。特に「指揮命令関係」と「契約の目的」がポイントです。

「請負契約」の目的は、「仕事の完成（成果物）」です。発注者（クライアント）は、完成した成果物（例：完成したプログラム）に対してお金を払います。一方、「派遣契約」の目的は、「労働力の提供（労働）」です。派遣先（クライアント）は、派遣労働者が働いた「時間」に対してお金を払い、労働者に直接「指揮命令」を行います。

選択肢2は誤りです。派遣契約で管理（指揮命令）を行うのは「派遣先企業」です。請負契約で管理（指揮命令）を行うのは「請負業者」です。選択肢3も誤りです。どちらの契約形態でも、労働者は発注者（クライアント）に「直接雇用」されてはいません。

【解説】

正解: 3 労働者は派遣元企業に雇用される

この問題は、労働者派遣の「雇用主は誰か」という、三者関係の基本を正しく理解しているか、再度確認するものです。

派遣契約において、労働者は「派遣元企業」（派遣会社）と雇用契約を結んでいます。したがって、労働者を「雇用している」のは派遣元企業です。労働者は、雇用主である派遣元の指示で、派遣先企業へ行き、そこで「派遣先企業」の指揮命令を受けて働きます。

選択肢1は「請負契約」と「指揮命令」が混ざっており、誤りです。指揮命令が発生するのは派遣契約です。選択肢2は、派遣契約に関する最も典型的な誤解です。労働者は派遣先企業ではなく、派遣元企業に雇用されています。

【解説】

正解: 2 成果物の完成が契約の中心となる

この問題は、「請負契約」の最も重要な法的特徴（契約の目的と指揮命令関係）を、派遣契約と対比して正しく理解しているかを確認するものです。

請負契約の目的は、労働力の提供（時間）ではなく、あらかじめ定められた「成果物の完成」です。発注者は、その完成した成果物に対して報酬を支払います。また、請負業者の労働者に対する指揮命令は、発注者（クライアント）ではなく、請負業者が自ら行います。

選択肢1の「労働者が派遣先の指揮命令を受ける」は、「派遣契約」の説明です。請負契約でこれを行うと「偽装請負」という違法行為になります。選択肢3の「請負業者が労働者の賃金を支払わない」は誤りです。請負業者は自社の従業員の雇用主であり、当然ながら賃金を支払う義務があります。