【ITパスポート練習問題 6.3対応】(2) 経営戦略に関する用語 – 2

【解説】

正解: 2 本部が経営資源やノウハウを提供する

この問題は、フランチャイズチェーンの基本的な仕組み、特に本部（フランチャイザー）と加盟店（フランチャイジー）の役割分担を理解しているかを問うています。

正解の選択肢は、フランチャイズチェーンの核心的な特徴を説明しています。本部は、確立されたブランド名、成功した経営ノウハウ、商品やサービス、運営マニュアルなどを加盟店に提供します。加盟店は、これらの経営資源を利用する権利を得る対価として、加盟金やロイヤリティ（売上の一部など）を本部に支払います。

「フランチャイジーが完全な独立経営を行う」は間違いです。加盟店は独立した事業者ですが、本部と契約を結んでおり、ブランドイメージや品質を維持するために、本部の定めたマニュアルや指導に従う義務があり、経営には一定の制約があります。「フランチャイジーは常に商品の価格を自由に決められる」も間違いです。ブランド全体で統一したサービスを提供するため、価格設定についても本部の方針や指導に従う場合がほとんどです。

【解説】

正解: 1 加盟店はブランドの信用をすぐに活用できる

この問題は、フランチャイズチェーンに加盟する側（フランチャイジー）にとっての主な利点（メリット）を理解しているかを問うています。

加盟店にとって最大のメリットは、ゼロから事業を立ち上げるのに比べ、開業初期のリスクを大幅に減らせる点です。本部がすでに築き上げたブランドの知名度や信用力を最初から利用できるため、特別な宣伝をしなくても顧客を集めやすく、早期から安定した経営が期待できます。

「加盟店は独自の商品ラインナップを自由に展開できる」は間違いです。フランチャイズチェーンは、どの店舗でも同じ品質の商品・サービスを提供することでブランドの信用を維持しているため、加盟店が独自商品を自由に開発・販売することは原則として認められていません。「本部は加盟店の経営に一切関与しない」も間違いです。本部は、ブランド価値を維持するために、スーパーバイザー（店舗指導員）を派遣するなどして、加盟店の経営指導やサポートを行います。

【解説】

正解: 2 加盟店は本部に対し一定のロイヤリティを支払う

この問題は、フランチャイズチェーンにおける本部と加盟店の間のお金の流れ、特に加盟店が本部に支払う対価について理解しているかを問うています。

加盟店は、本部からブランドの使用権や経営ノウハウの提供、継続的な経営指導などを受ける対価として、本部に「ロイヤリティ」と呼ばれる費用を定期的に支払う義務を負います。このロイヤリティは、売上の一定割合や、毎月定額など、契約によって定められています。

「加盟店はすべての売上を本部に納める必要がある」は間違いです。加盟店は独立した事業者であり、売上から仕入れ費や人件費、ロイヤリティなどの経費を支払った残りが加盟店の利益となります。「加盟店は広告費の負担が一切ない」も間違いです。全国規模の広告宣伝費は本部が負担する場合が多いですが、店舗周辺の地域限定の広告費などは、契約に基づき加盟店が負担するケースもあります。

【解説】

正解: 1 外部株主の影響を排除して経営権を確保する

この問題は、MBO（Management Buyout：経営陣による買収）という手法の目的を理解しているかを問うています。MBOは「誰が」「何を」買収するものかを問う問題です。

MBOとは、その企業の経営陣が、既存の株主（特に市場の投資家などの外部株主）から自社の株式を買い取り、自らがオーナー（株主）となって経営権を確保する手法です。これにより、外部株主からの短期的な利益追求の圧力や経営への干渉を排除し、中長期的な視点に立った迅速な経営判断や事業改革を行いやすくすることが主な目的です。

「株式市場での資金調達を拡大する」は間違いです。MBOは株式を市場から買い集める（非公開化する）ことが多いため、市場から広く資金を集める「上場（株式公開）」とは逆の方向性です。「他社による敵対的買収を支援する」も間違いです。MBOは経営陣が自ら経営権を握るためのものであり、他社による買収を支援するものではありません。

【解説】

正解: 3 資金調達の困難さが生じる可能性がある

この問題は、MBO（経営陣による買収）を実行する際に直面する、主な課題やリスクについて理解しているかを問うています。

MBOを実行するためには、経営陣が自社の株式を既存の株主から買い取るための莫大な資金が必要となります。経営陣個人の資産だけで賄えるケースは少なく、多くの場合、金融機関からの融資（ローン）や、MBOを支援する投資ファンドなどから資金を調達する必要があります。この多額の資金を確保することが難しくなる可能性が、MBOの大きなリスクの一つです。

「経営陣と株主の利益が完全に一致する」は間違いです。MBO後は経営陣が株主になりますが、例えば融資を受けていれば返済義務が生じるなど、新たな利害関係が発生するため、必ずしも利益が一致するとは言えません。「株主構成が不透明になる可能性がある」も間違いです。MBOにより株式が非公開化された場合、株主は経営陣や支援ファンドなどに集約されるため、むしろ株主構成は明確になります。

【解説】

正解: 2 上場廃止を目指し経営の独立性を強化する場合

この問題は、MBO（経営陣による買収）が、どのような経営的な状況や判断のもとで選択されることが多いかを問うています。

上場企業は、株主（特に短期的な利益を求める投資家）の意向に経営が左右されやすく、大胆な事業改革や中長期的な投資判断がしにくい場合があります。そこで、MBOによって株式を買い集めて非公開化（上場廃止）することで、外部の干渉を排除し、経営陣の裁量で迅速かつ自主的な経営（経営の独立性強化）を目指す場合にMBOが活用されます。

「市場規模の拡大を狙うための株式公開」は間違いです。これはMBOとは逆に、株式を市場に公開（上場）して資金調達を目指す場合の目的です。「株主還元を目的とした配当の引き上げ」は、株主への利益配分に関する施策であり、経営権の移動を伴うMBOの主な目的ではありません。

【解説】

正解: 3 市場外での株式取得方法である

この問題は、TOB（Takeover Bid：株式公開買付け）という株式取得手法の基本的な特徴を理解しているかを問うています。

TOBは、特定の企業の株式を一定数以上取得したい場合（例：経営権の取得）に用いられる手法です。「買付期間、買付価格、買付株数」を事前に公告（公開）し、株主に対して「その条件で株を売ってください」と呼びかけます。株主は、証券取引所の通常の売買（市場内取引）を通さず、直接応募する形で株式を売却します。このため、原則として「市場外」での取得方法とされています。

「株式市場内で公開競争を行う」は間違いです。市場内での価格の競り合いではなく、提示された固定価格での売却を募る方法です。「買付価格は市場価格に依存する」も間違いです。買付価格は、通常、市場価格に一定額を上乗せ（プレミアム）した固定価格が事前に提示され、期間中に市場価格が変動しても、提示された買付価格は変わりません。

【解説】

正解: 2 特定企業の経営権を取得するため

この問題は、TOB（株式公開買付け）が「何のために」行われるのか、その主な目的を理解しているかを問うています。

TOBの最も一般的な目的は、対象企業の株式を短期間でまとまった量（例えば議決権の過半数など）取得し、その企業の経営権を握ること（買収）です。市場内の通常の売買で大量の株式を買おうとすると、株価が急騰してしまいコストが高くつくため、TOBという手法が用いられます。

「資本市場の流動性を高めるため」は間違いです。TOBは特定の株式を買い集める行為であり、市場全体の活性化（流動性向上）を目的とするものではありません。「配当収入を増やすため」も間違いです。配当目的の投資（純投資）でTOBが使われることも稀にありますが、ITパスポートで問われるTOBの主な目的は、M&Aの一環としての経営権取得です。

【解説】

正解: 2 買付価格と期間の事前公開

この問題は、TOB（株式公開買付け）の手続きにおいて、投資家（株主）保護のために義務付けられているルールを理解しているかを問うています。

TOBは、金融商品取引法によって厳格なルールが定められています。「公開」買付けと呼ばれる通り、すべての株主が公平に応募の機会を得られるよう、「いくらで（買付価格）」「いつからいつまで（買付期間）」「何株買うか（買付株数）」といった重要な条件を、事前に公告し、一般に広く知らせることが義務付けられています。

「株主総会での全員一致の承認」は間違いです。TOBは、買われる側の企業の株主総会決議などを必要とせず、株主が個々の判断で売却に応じるかどうかを決めるものです。「他社からの同意書の取得」も、TOBの手続きにおいて必要な要素ではありません。

【解説】

正解: 3 生産規模の拡大に伴い単位コストが減少する

この問題は、「規模の経済（Economies of Scale）」という経営用語の基本的な意味を理解しているかを問うています。

「規模の経済」とは、事業規模や生産量を大きくすればするほど、製品1単位（1個）あたりの生産コストが低下していく現象を指します。例えば、工場を建てる費用（固定費）が1億円かかったとして、製品を1万個作れば1個あたりの固定費負担は1万円ですが、100万個作れば1個あたり100円に下がります。このように固定費が分散されることが、規模の経済が働く主な理由です。

「生産規模の拡大に伴い単位コストが増加する」は、規模が大きくなりすぎて管理が非効率になる「規模の不経済」と呼ばれる現象であり、逆の説明です。「生産規模の拡大に伴い売上高が減少する」も間違いで、通常は売上高の増加を目指して生産規模を拡大します。

【解説】

正解: 1 ソフトウェア開発業界

この問題は、「規模の経済」の概念を、具体的な業界の特徴と結びつけて理解できるかを問うています。規模の経済は、固定費が大きく、追加生産コスト（変動費）が小さい産業で特に働きやすくなります。

ソフトウェア開発は、その典型例です。製品を開発するための初期費用（人件費や開発機材などの固定費）は非常に高額になりますが、一度ソフトウェアが完成すれば、それを複製して追加で1本販売するためにかかる費用（変動費）は、ダウンロード販売ならほぼゼロに近くなります。そのため、販売本数（規模）が増えれば増えるほど、1本あたりのコストが劇的に下がり、規模の経済が非常に強く働きます。

「個人経営の飲食店業界」や「手作り工芸品の販売業界」は、1皿の料理や1個の工芸品を作るごとに、材料費や手間（人件費）がほぼ比例してかかるため、規模を拡大しても単位コストは下がりにくく、規模の経済は働きにくいと言えます。

【解説】

正解: 1 管理コストが急増する場合

この問題は、規模の経済が無限に続くわけではなく、ある点を超えると逆に非効率になる「規模の不経済」と呼ばれる現象について理解しているかを問うています。

生産規模の拡大に伴い、当初は単位コストが下がっていきます（規模の経済）。しかし、企業規模があまりに大きくなりすぎると、組織が複雑化し、部門間の調整が難しくなったり、意思決定に時間がかかったり、品質管理が行き届かなくなったりします。こうした「管理コスト」や非効率性が、生産量の増加以上に急増すると、単位コストが逆に上昇に転じてしまいます。これが「規模の不経済」であり、規模の経済の効果が失われる状況です。

「生産量が減少する場合」は、規模の経済が働く前提（規模の拡大）が崩れる状況です。「商品価格が高騰する場合」は、コストではなく販売価格に関する記述です。

【解説】

正解: 2 生産量が増えるほど生産コストが低下する

この問題は、「経験曲線（Experience Curve）」の効果について、その基本的な内容を理解しているかを問うています。

経験曲線効果とは、ある製品の「累積」生産量（＝これまでに作ってきた総量）が増加するにつれて、作業者の習熟（慣れ）や製造プロセスの改善が進み、製品1単位あたりのコストが一定の割合で低下していく現象を指します。規模の経済が固定費の分散に焦点を当てているのに対し、経験曲線は「学習」や「効率化」によるコスト低下に着目した概念です。

「生産量が増えるほど生産コストが上昇する」は逆の説明です。「生産量が増えるほど生産コストが一定になる」は、経験による学習効果や効率化を考慮していないため、間違いです。

【解説】

正解: 1 労働者の熟練度が向上する

この問題は、経験曲線効果（累積生産量が増えるとコストが下がる）が「なぜ」起こるのか、その主な要因を理解しているかを問うています。

経験曲線効果の最も代表的な要因は、労働者の「学習効果」です。同じ作業を何度も繰り返すことで、作業手順に習熟し（熟練度が向上し）、より速く、より正確に作業ができるようになります。これにより、作業時間の短縮や不良品の発生率低下が起こり、結果として単位コストが低下します。

「原材料価格が上昇する」や「生産設備が老朽化する」は、どちらもコストを増加させる要因であり、経験曲線によるコスト低下効果とは逆の働きをします。

【解説】

正解: 2 市場シェアの拡大を目指す

この問題は、経験曲線効果（累積生産量が多いほどコストが下がる）を、実際の経営戦略としてどのように活用すべきかを問うています。

経験曲線効果が期待できる製品では、他社よりも早く、より多くの累積生産量を達成した企業が、最も低い生産コストを実現できる（コスト優位性を持てる）ことになります。したがって、戦略としては、早期に大量生産・大量販売を行い、市場シェアを急速に拡大することで、競合他社に対してコスト面での優位性を築くことが有効となります。

「高価格戦略を追求する」は、コスト優位性よりもブランド価値や高品質といった付加価値で勝負する戦略であり、経験曲線の活用とは方向性が異なる場合があります。「商品の多様化に注力する」は、多品種少量生産になりやすく、単一製品の累積生産量が蓄積されにくいため、経験曲線効果が働きにくくなる可能性があります。

【解説】

正解: 1 取引コストの削減と供給の安定化

この問題は、「垂直統合」という経営戦略の主な利点（メリット）を理解しているかを問うています。

垂直統合とは、これまで外部の企業から購入していた原材料や部品（川上）、あるいは外部の企業に委託していた販売や物流（川下）を、自社（または自社グループ）の内部で行うようにすること（内製化）を指します。これにより、外部企業との価格交渉や契約締結にかかる手間やコスト（取引コスト）を削減できます。また、必要な部品や原材料の供給を自社でコントロールできるため、供給が途絶えるリスクを減らし、安定した生産が可能になります。

「市場シェアの拡大」は垂直統合の直接的な利点ではありません。「他社への製造委託による生産効率の向上」は、垂直統合とは逆の戦略である「アウトソーシング（外部委託）」の説明です。

【解説】

正解: 3 自動車製造業界

この問題は、垂直統合の概念を、具体的な業界の特徴と結びつけて理解できるかを問うています。

自動車製造業界は、垂直統合が伝統的に進められてきた代表的な業界です。自動車は数万点もの部品から構成され、それらの部品の品質や供給の安定性が、最終製品の品質や生産スケジュールに極めて大きな影響を与えます。そのため、特にエンジンやトランスミッション、車体といった基幹部品については、自社や緊密なグループ企業内で開発・製造する（垂直統合する）ことで、品質管理や安定供給を図るケースが多く見られます。

「ソフトウェア開発業界」は、専門性の高い特定の技術を外部から調達（アウトソーシング）することが多い業界です。「個人経営の小売業」は、事業規模が小さく、自社で商品の生産工程まで遡って内製化する（垂直統合する）ことは困難です。

【解説】

正解: 2 柔軟な事業対応が難しくなる

この問題は、垂直統合（内製化）がもたらす潜在的な欠点（リスク）について理解しているかを問うています。

垂直統合を進めて、原材料から製造、販売まで多くの工程を自社で抱え込むと、それだけ多くの設備投資や人員が必要となり、組織が巨大化・硬直化しやすくなります。その結果、市場の需要が急激に変化したり、革新的な新技術が登場したりした際に、自社の生産ラインや組織体制を素早く変更することが難しくなり、経営の「柔軟性」が失われるリスクがあります。

「市場競争が激化する」は、垂直統合の直接的なリスクとは言えません。「製品の差別化が困難になる」も直接の関係はなく、むしろ重要な部品を内製化することで差別化につながる場合もあります。

【解説】

正解: 3 価格競争の激化

この問題は、「コモディティ化」という市場現象がもたらす典型的な影響について理解しているかを問うています。

コモディティ化（日用品化）とは、市場に流通している製品やサービスが、メーカーごとの品質や機能、ブランド力にほとんど差がなくなり、消費者にとって「どれを選んでも同じ」状態になることです。製品による差別化が難しくなると、企業は他社と競争するために「価格」を引き下げるしか手段がなくなり、結果として業界全体が激しい価格競争に陥りやすくなります。

「販売チャネルの増加」や「商品の品質向上」は、コモディティ化の直接的な影響として一概には言えません。

【解説】

正解: 1 農産物の市場

この問題は、コモディティ化の概念を、具体的な商品の特徴と結びつけて理解できるかを問うています。

農産物（例えば、特定品種の米、野菜、果物など）は、品質の規格化が進んでいるものが多く、生産者が異なっても品質や外観に大きな差が出にくい場合があります。消費者が品質の違いを認識しにくいため、価格で選ばれやすく、コモディティ化（＝価格競争）の影響を受けやすい典型的な市場とされています。（ただし、近年はブランド化による差別化の動きもあります。）

「高級ブランドのファッション業界」は、ブランドイメージという強力な付加価値によって差別化されており、コモディティ化しにくい代表例です。「医療機器の開発業界」も、特許技術や性能、安全性といった点で差別化が可能な業界です。

【解説】

正解: 2 独自の付加価値を創出する

この問題は、コモディティ化（他社との違いがなくなり、価格競争に陥ること）を回避するための、基本的な戦略について問うています。

コモディティ化の本質的な問題は「差別化ができない」ことです。したがって、コモディティ化を防ぐ（あるいは脱する）ためには、価格以外の面で「他社との違い」を意図的に作り出す必要があります。それが、他社にはない優れた機能、魅力的なデザイン、安心できるアフターサービス、強力なブランドイメージといった「独自の付加価値」を創出し、顧客に認めてもらうことです。

「製品の価格を市場平均より低く設定する」は、コモディティ化した結果として陥る価格競争そのものであり、防ぐための戦略ではありません。「市場シェアの縮小を受け入れる」は、戦略的な撤退の選択肢であり、コモディティ化を防ぐ積極的な戦略ではありません。

【解説】

正解: 2 自社の業務効率や成果を向上させるため

この問題は、「ベンチマーキング」という経営改善手法の主な目的を理解しているかを問うています。

ベンチマーキングとは、自社の製品、サービス、あるいは業務プロセス（仕事の進め方）を、その分野で最も優れていると認められる他社（ベストプラクティスを持つ企業）と比較・分析する手法です。他社との差を客観的に把握し、優れた点を「ものさし（ベンチマーク）」として学ぶことで、自社の弱点や課題を明確にし、具体的な業務効率の向上や成果の改善につなげることを目的としています。

「他社の特許技術を取得するため」は、法的なライセンス交渉などが必要であり、ベンチマーキングとは異なります。「競合他社の経営戦略を模倣するため」は間違いです。単に表面的な模倣をするのではなく、優れた仕組みを分析し、自社に合った形で取り入れることが重要です。

【解説】

正解: 3 異業種のベストプラクティスを持つ企業

この問題は、ベンチマーキングを行う際の比較対象（ものさし）として、どのような相手が選ばれるかを理解しているかを問うています。

ベンチマーキングの比較対象は、必ずしも同業の競合他社とは限りません。自社が改善したい特定の業務プロセス（例えば、物流、顧客対応、人材育成など）において、業界の垣根を越えて最も優れている（ベストプラクティスを持つ）企業であれば、たとえ「異業種」であっても比較対象となります。異業種から学ぶことで、業界の常識にとらわれない革新的な改善のヒントが得られることもあります。

「自社の過去の業績」との比較は、外部の優れた事例と比較するベンチマーキングとは異なります。「経営陣の個人的な目標」は、客観的な比較対象とは言えません。

【解説】

正解: 2 自社の状況に合った改善策を選定する

この問題は、ベンチマーキングによって他社の優れた点を学んだ後、それを自社に活かす（活用する）上で、最も重要な心構えを問うています。

ベンチマーキングは、他社の優れた手法（ベストプラクティス）を「そのまま模倣する」ことではありません。他社で成功した方法が、そのまま自社で成功するとは限りません。なぜなら、企業の規模、文化、持っている経営資源（ヒト・モノ・カネ）、顧客層などは異なるからです。したがって、他社の事例を分析した上で、自社の実情や状況に合わせて「取捨選択」し、「カスタマイズ（調整）」して取り入れることが不可欠です。

「他社の経営戦略をそのまま導入する」や「同業他社のすべての手法を導入する」は、自社の状況を無視した単純な模倣であり、失敗する可能性が高いため不適切です。

【解説】

正解: 2 在庫管理と配送計画の立案

この問題は、「ロジスティクス」という用語がカバーする具体的な業務活動の範囲を理解しているかを問うています。

ロジスティクスとは、一般的に「物流」と訳されますが、単にモノを運ぶだけではありません。原材料の調達から、生産、倉庫での保管（在庫管理）、顧客への配送に至るまで、企業活動における「モノの流れ」全体を、効率的かつ円滑にするための一連の活動を指します。その中でも、欠品や過剰在庫を防ぐための「在庫管理」と、効率的な「配送計画の立案」は、ロジスティクスの中心的な活動です。

「製品の広告キャンペーンの策定」は、マーケティング部門の活動です。「顧客からのクレーム対応」は、カスタマーサポート部門の活動です。

【解説】

正解: 3 顧客への配送時間とコストの最適化

この問題は、ロジスティクス（モノの流れの管理）が、最終的に何を目指しているのか、その目的を理解しているかを問うています。

ロジスティクスの目的は、単に「コストを最小限にすること」だけではありません。同時に、「顧客が求めるサービスレベル（例：注文通りに、指定された日時に、正確に届ける）」を維持・向上させることも重要です。コストを追求しすぎるとサービスが低下し、逆にサービスを追求しすぎるとコストが際限なく上がってしまいます。この「コスト」と「サービスレベル（配送時間など）」の2つを両立させる、最も効率的なバランス点（最適化）を見つけることが、ロジスティクスの重要な目的です。

「生産コストの完全な削減」は非現実的です。「市場シェアの独占」は経営戦略全体の目標であり、ロジスティクスの直接的な目的ではありません。

【解説】

正解: 2 ITシステムを活用した在庫と輸送管理の効率化

この問題は、現代の複雑なロジスティクスを効率的に行う（効果を高める）ために、どのような手段が有効かを問うています。

ロジスティクスでは、調達、生産、在庫、配送など、多くの拠点とプロセスが関わります。これらの膨大な情報を人間の勘や経験だけで管理し、最適化するのは困難です。そこで、WMS（倉庫管理システム）やTMS（輸配送管理システム）といったITシステムを活用し、在庫状況やトラックの配送状況などをリアルタイムで「見える化」・分析することで、在庫の最適化や効率的な配送ルートの計画が可能になります。

「在庫を最小限にするため全商品を受注生産にする」は、リードタイム（注文から納品までの時間）が長くなりすぎ、顧客満足度を損なうため最適とは言えません。「配送コストを重視せずすべての地域に即日配送する」は、サービスレベルは高いですがコストを無視しており、最適化とは言えません。

【解説】

正解: 1 新製品の市場投入による自社製品間の競争発生

この問題は、「カニバリゼーション」という経営用語が、どのような状況を指すのか、その発生原因を理解しているかを問うています。

カニバリゼーション（Cannibalization）とは、日本語で「共食い」と訳されます。企業が市場に投入した新しい製品が、既存の自社製品の顧客層や市場シェアを奪ってしまい、結果として自社製品同士で競争（共食い）してしまう現象を指します。新製品の売上が伸びても、それが既存製品の売上減少によるものであれば、企業全体の売上は増えていない（あるいは減少している）可能性があります。

「他社製品の市場進出による競争激化」は、カニバリゼーションではなく、通常の市場競争です。「販売価格の上昇による売上減少」は、価格戦略の結果であり、カニバリゼーションとは異なります。

【解説】

正解: 3 製品ラインの差別化を進める

この問題は、カニバリゼーション（自社製品同士の共食い）を避ける（防ぐ）ために、どのような戦略が有効かを問うています。

カニバリゼーションは、新製品と既存製品のターゲット顧客や機能、価格帯が「似ている（重複している）」ために発生します。これを防ぐためには、新製品を投入する際に、既存製品との「違い」を明確にする（差別化する）ことが重要です。例えば、機能、価格、ターゲットとする顧客層、販売チャネルなどを意図的にずらすことで、それぞれの製品が異なるニーズを満たすように設計（ポジショニング）します。

「既存製品の販売を完全に終了する」は、カニバリゼーションを防ぐのではなく、新製品に「切り替える」戦略です。「競合他社との価格競争を強化する」は、カニバリゼーションの問題とは直接関係ありません。

【解説】

正解: 2 新製品が自社の異なる顧客層を獲得した場合

この問題は、カニバリゼーション（共食い）が発生したように見えても、それが必ずしも「問題とならない」（あるいは意図的である）ケースについて理解しているかを問うています。

カニバリゼーションが問題となるのは、既存製品の売上が減るだけで、会社全体の売上が純増しない場合です。しかし、投入した新製品が、既存製品では取り込めていなかった「新しい顧客層」を主として獲得できた場合、たとえ既存製品の売上が多少減ったとしても、会社全体としては新たな市場を開拓し、売上を上乗せできたことになります。この場合は、カニバリゼーションは問題視されません。

「自社製品が競合他社製品を上回る売上を達成した場合」は、新製品が成功したことを示しますが、カニバリゼーションが起きていないことにはなりません（既存品の売上を奪った上で、他社からも奪った可能性がある）。「市場全体の成長が見込まれる場合」は外部環境の話です。

【解説】

正解: 3 環境対策の取り組み状況

この問題は、ESG投資の3つの評価軸「E」「S」「G」のうち、「E（Environment：環境）」が具体的に何を指しているかを理解しているかを問うています。

ESG投資とは、従来の財務情報（売上や利益など）だけでなく、Environment（環境）、Social（社会）、Governance（企業統治）という3つの非財務情報に関する企業の取り組みを評価して、投資先を選定する手法です。「環境対策の取り組み状況」、例えばCO2排出量の削減努力、再生可能エネルギーの利用推進、水資源の保全などは、まさに「E（環境）」の評価項目そのものです。

「配当利回りの高さ」や「製品の市場シェア」は、投資判断における伝統的な財務情報や経営指標であり、ESG投資が新たに着目する非財務情報ではありません。

【解説】

正解: 2 透明な企業経営と法令順守

この問題は、ESG投資の3つの評価軸「E」「S」「G」のうち、「G（Governance：企業統治）」が具体的に何を指しているかを理解しているかを問うています。

「G（Governance：企業統治）」とは、企業が健全で公正、かつ透明性の高い経営を行っているかを評価する視点です。具体的には、法令順守（コンプライアンス）の体制が整っているか、汚職や贈収賄の防止策が講じられているか、取締役会の構成が多様で独立性が保たれているか、情報開示が適切に行われているか（透明な企業経営）などが評価されます。

「企業の利益率の高さ」は財務情報です。「製品のブランド力の強化」はマーケティング戦略に関するものであり、「G（企業統治）」の直接的な評価項目ではありません。

【解説】

正解: 2 持続可能な社会の実現を支援するため

この問題は、ESG投資という考え方が、なぜ近年世界的に広まっているのか、その背景にある社会的な目的意識を理解しているかを問うています。

従来の投資は、主に企業の短期的な利益や株価上昇（投資家の利益最大化）を目的としていました。しかし、気候変動問題、人権問題、社会格差の拡大などが世界的な課題となる中、企業も利益を追求するだけでなく、これらの社会課題の解決に貢献すべきであるという考え方が強まりました。ESG投資は、環境（E）、社会（S）、企業統治（G）に配慮した経営を行う企業を、投資（お金）の力で応援・支援することで、「持続可能な（サステナブルな）社会」の実現を目指すものです。

「投資家の利益最大化を目指すため」は、ESGの視点が普及する「前」の、伝統的な投資の主な目的です。「政府が企業の成長を保証するため」は誤りです。